流体解析のあれこれ

流体解析をこよなく愛する有限体積法の信者によるブログ

Sommerfeld and Qiu (1992)の円管内の蒸発を伴う液滴噴霧の乱流流れ

Sommerfeld and Qiu (1992) 1)は蒸発液滴を噴霧しない場合と噴霧する場合の熱移動を伴う円管内の乱流流れに関する実験について報告している.液滴を噴霧しない場合には,流体の速度や温度の平均値や分散について,液滴を噴霧する場合には,液滴の質量流束,液滴の平均粒径について報告している.そのため,熱移動を伴う円管内の乱流流れに加えて,蒸発を伴う噴霧の乱流流れの検証に用いることができる.

1) M. Sommerfeld and H. H. Qiu, Experimental studies of spray evaporation in turbulent flow, International Journal of Heat and Mass Transfer, 19(1), 10-22 (1992)

Johnson and Bennett (1984)の円管内における物質移動を伴う同軸二重噴流の乱流流れ

Johnson and Bennett (1984)1)は円管内における物質移動を伴う同軸二重噴流の乱流流れの解析を実施している.具体的には,作動流体を水とし,中心の噴流にのみインクを添加し,円管内の速度とインクの濃度を測定し,それらの時間平均値や分散を報告している.そのため,円管内における同軸二重噴流の乱流流れだけでなく物質移動に関する検証問題として用いることができる.

1) B. V. Johnson and J. Bennett, Statistical characteristics of velocity, concentration, mass transport, and momentum transport for coaxial jet mixing in a confined duct, ASME, Journal of Gas Turbines and Power, 106(1), 121-127 (1984)

Habib and Whitelaw (1980)の円管内における同軸二重噴流の乱流流れ

Habib and Whitelaw (1980)1)は円管内における同軸二重噴流の乱流流れの解析を実施している.具体的には,作動流体を空気とし,円管内の速度を測定し,それらの時間平均値や分散を報告している.なお,スワラを設置しない場合と設置した場合について検討しているが,スワラの形状の詳細が不明であるため,スワラがを設置した場合の境界条件を正確に与えるのは困難である.

1) M. A. Habib and J. H. Whitelaw, Velocity characteristics of confined coaxial jets with and without swirl, ASME Journal of Fluids Engineering, 102(1), 47-53 (1980)

スタッガード格子とコロケート格子

1973年に速度成分以外のあらゆる物理量をセル中心に,速度成分をセル界面に定義するスタッガード格子が提案された.その後,1983年にRhie-Chowの補間が発表されて以来,速度成分を含むあらゆる物理量をセル中心に定義するコロケート格子を用いて,チェッカーボード圧力場と呼ばれる非現実的な市松模様の圧力場を生じることなく流体解析を実施することができるようになった.その後,複雑な形状を有する解析対象を取り扱うことができる境界適合格子を,近年では,非構造格子を用いた流体解析が当たり前のように行われるようになってきた.境界適合格子と非構造格子ではいずれも速度成分をセル界面に定義するモーメンタムセルを定義できないため,これらの格子ではコロケート格子を用いなければならない.そのため,Rhie-Chowの補間は流体解析において極めて重要な方法論であると言える.



ポリヘドロン(多面体要素)

非構造格子で用いられるハイブリッドメッシュでは,

  • テトラへドロン
  • ピラミッド
  • プリズム
  • ヘキサへドロン

の要素が用いられる.テトラへドロンはデローニ法により自動生成できるものの,要素間の界面と要素中心間を結ぶ直線の直交性が必ずしも高くないため,高い解析精度を期待できない.ボロノイ法を用いてハイブリッドメッシュで用いられる要素を任意の多面体要素であるポリへドロンにに変換することで,要素間の界面と要素中心間を結ぶ直線の直交性が向上することで,解析精度の向上が期待できる.ただし,

  • ポリヘドロンである多面体要素を構成する多角形の節点が同一平面上に存在しない場合があり,要素間の界面の定義が曖昧になってしまう.
  • ポリヘドロンである多面体要素の体積を制御することが困難であり,体積の小さい要素が生成してしまう.そのため,要素の代表長さが短くなってしまうことで,クーラン数や拡散数が小さくなってしまうため,時間刻みが小さくなってしまい,陽解法を用いるのが困難になってしまう.



一次元非定常拡散問題の理論解(2)

以前,有限体積法の数値解を検証することを目的として,両境界にディレクレ条件を適用する場合の一次元の拡散(熱伝導)問題の理論解(厳密解あるいは解析解)を紹介した.今回は,異なる境界条件を適用する場合の一次元の拡散(熱伝導)問題の厳密解(解析解)を紹介する.「Transport Phenomena」のpp. 374-381に一方の境界にディレクレ条件を,もう一方の境界にノイマン条件を適用する場合の一次元の拡散(熱伝導)問題の厳密解(解析解)を紹介する.具体的には,初期条件として境界も含めて温度一定に保った解析対象の一方の境界の温度を瞬時に別の温度にする場合の任意の時間と位置における温度を求めることができる. 

一次元非定常拡散問題の理論解(1)

有限体積法を学ぶ際,一次元の拡散(熱伝導)問題から始めるだろう.その際,拡散問題の数値解を検証したい.「図解伝熱工学の学び方」のpp. 62-64に一次元非定常熱伝導の理論解(厳密解あるいは解析解)が載っているので,ここで紹介しておく.具体的には境界条件をディリクレ(温度固定)条件とし,解析領域の初期の温度分布として中心の温度が最も高く,境界に向かってそれぞれ線形に下がる温度分布を仮定した場合の任意の時間と位置における温度を求めることができる.なお,解析解の導出にはフーリエサイン級数が用いられているが, 有限体積の範疇ではないため,詳細については参考書に譲る.