流体解析のあれこれ

流体解析をこよなく愛する有限体積法の信者によるブログ

一次元非定常拡散問題の理論解

有限体積法を学ぶ際,一次元の拡散(熱伝導)問題から始めるだろう.その際,拡散問題の数値解を検証したい.「図解伝熱工学の学び方」のpp. 62-64に一次元非定常熱伝導の理論解(解析解)が載っているので,ここで紹介しておく.具体的には境界条件をディリクレ(温度固定)条件とし,解析領域の初期の温度分布として中心の温度が最も高く,境界に向かってそれぞれ線形に下がる温度分布を仮定した場合の任意の時間と位置における温度を求めることができる.なお,解析解の導出にはフーリエサイン級数が用いられているが, 有限体積の範疇ではないため,詳細については参考書に譲る.

 

拡散燃焼へのFGM法の応用

以前の記事で,Flamelet-Generated Manifolds (FGM)法は,当初,予混合燃焼を対象とした燃焼モデルであることを紹介した.これは,FGM法では目的の燃焼シミュレーションにおいて参照するFlamelet tableが単一の等量比の予混合火炎を対象に構築されるためである.拡散燃焼を対象にFGM法を用いるためには,種々の当量比においてFlamelet tableを構築し,当量比を混合分率に変換し,Flamelet tableのパラメータの1つとする.これにより,FGM法のFlamelet tableの次元は増えるものの,拡散燃焼を対象にすることができる.なお,この拡散燃焼を対象とするFGM法のFlamelet tableにおいて,混合分率が0から希薄燃焼限界までと過濃燃焼限界から1まではFlamelet tableを構築する際の予混合火炎の燃焼シミュレーションを実施することができない.そのため,一般に混合分率が0から希薄燃焼限界までと過濃燃焼限界から1までのデータは線形補間により構築する.

Taylor et al. (1981)のベンドを有する矩形ダクト内流れ

Taylor et al. (1981)1)は90°のベンドを有する矩形ダクト内の層流および乱流流れの測定を行っている.90°のベンドを有するため,境界適合格子や非構造格子を用いた流体解析の検証問題に用いることができる.乱流流れの測定も行っていることから,これらの格子上におけるReynolds-Averaged Navier-Stokes (RANS)やLarge Eddy Simulation (LES)に基づく乱流流れの計算の検証にも用いることができる.

1) Taylor, A. M. K. P. et al., Measurements of Laminar and Turbulent Flow in a Curved Duct With Thin Inlet Boundary Layers, NASA Contractor Report 3367 (1981)

Durst and Loy (1985)の急縮小を伴う円管内における層流流れの実験

Durst and Loy (1985)は種々のReynolds数に対して円管内における急縮小を伴う層流流れの詳細な実験データを提供している.特に急縮小前後における流れ場として軸方向速度成分の測定値が提供されている.なお,流入境界条件には円管内発達した層流流れの解析解であるハーゲンポアズイユ流れの分布を与えるのが妥当であると考える.

1) Durst, F. and Loy, T., Investigations of laminar flow in a pipe with sudden contraction of cross sectional area, Computers & Fluids, 13(1), 15-36 (1985)

連立方程式(行列式あるいは線形システム)の解法(1)

非圧縮性流体解析では,圧力を陰的に取り扱うため,圧力の解法がMAC (Marker And Cell)系解法あるいはSIMPLE (Semi-Implicit Method for Pressure-Linked Equations)アルゴリズムによらず,圧力あるいはその補正値を求めるためには連立方程式(あるいは行列式や線形システム)を解く必要がある.流体解析に要する計算時間の大部分(一般に,80%以上)は行列式の解法となる.そのため,高速な行列式の解法を用いることで,計算時間を大幅に削減することが可能となる.ここで,行列式の解法は,

  • 直接法
  • 間接法

に大別される.有限体積法における解くべき行列式中の行列は疎行列であるため,有限体積法では行列式の解法には一般に間接法が用いられる.そのため,安定で収束性が良く,その結果,計算時間が短い解法を用いたい.著者の経験から安定化双共役勾配法(Bi-Conjugate Gradient STABilized method, Bi-CGSTAB法)が最も安定で収束性が良い解法である.東京大学が開発した有限体積法に基づく流体解析コードであるFrontFlow/RedではBi-CGSTABに加えて不完全コレスキー分解付き共役勾配法(Incomplete Cholesky Conjugate Gradient method, ICCG法)も採用されている.しかしながら,場合によっては行列式の解法を1から自分で書くのは困難である.「行列計算ソフトウェア」にはBi-CGSTABとICCGを含む多くの行列式の解法のソースコードが提供されているので,これらを活用すると良いと思われる.

 「コンピュータによる連立一次方程式の解法」にも多くの行列式の解法がソースコード付きで掲載されている.

 

Armaly et al. (1983)のバックステップ流れの層流流れの実験

Armaly et al. (1983)はのバックステップ流れの層流流れに関する詳細な実験データを報告している.特に急拡大後における流れ場として流れ方向の速度成分の測定値が提供されている.なお,流入境界条件には平板間の発達した層流流れの解析解の分布を与えるのが妥当であると考える.また,Reynolds数が大きい条件では,スッテプ後の流れは定常に達することなく変化しつづけるため,測定結果との比較には数値解の時間平均操作が必要である.

1) Armaly, B. F. et al., Experimental and theoretical investigation of backward-facing step flow, Journal of Fluid Mechanics, 127, 473-496 (1983)

有限体積法の学び方(2)

 1994年に出版された「数値流体工学」では,

  • 第2章「熱伝導方程式を利用した有限体積法入門」で拡散項の離散化について
  • 第3章「ナビエ・ストークス方程式の解法」で拡散項に加えて対流項の離散化と圧力の解法としてSemi-Implicit Method for Pressure-Linked Equations (SIMPLE)アルゴリズムについて
  • 第4章「熱輸送を伴う流れ」で流れの計算に加えてブジネスク近似を施した温度を変数とするエネルギー方程式について
  • 第5章「乱流」でReynolds-Averaged Navier-Stokes (RANS)とk-e二方程式モデルについて

 学ぶと良い.各章について,FORTRAN 77ではあるが,ソースコードつきで学ぶことができる.第2章と第3章の内容は,以前,「有限体積法の学び方(1)」で紹介した内容と一部重複するが,第4章と第5章の内容は本書で学ぶと良いと思われる.なお,第6章の「一般座標系におけるナビエ・ストークス解法」では,コロケート格子上と座標変換による境界適合格子における流れの計算方法について述べられているが,有限差分法が混在しており,あまりお勧めできない.