流体解析のあれこれ

流体解析をこよなく愛する有限体積法の信者によるブログ

ParaViewによる可視化(2)

無償の可視化ソフトウェアであるParaViewでは,可視化するデータに関して多くのファイルフォーマットに対応している.商用のコードを用いている場合,データのファイルフォーマットは指定されているため,可視化するデータのファイルフォーマットについて悩むことはない.一方,in-houseのコードを開発して場合,開発や可視化を効率的に行うためにどのファイルフォーマットを選べばよいかが問題となる.ファイルフォーマットに求められる要件は,

  1. ファイルフォーマットがバイナリフォーマットに対応している.
  2. ファイルフォーマットが厳格に定義されており,その構造がシンプルである. 
  3. ファイル容量が必要最小限である.

であると考える.これまで下記のファイルフォーマットとを試したため,それぞれの特徴についてまとめておく.

  • Legacy VTKフォーマット
    ParaViewで有名なLegacy VTKフォーマットでは,ファイルフォーマットがバイナリフォーマットに対応しているものの,ファイルフォーマットは厳格に定義されているものの,その構造はやや複雑である.また,メッシュファイルとデータファイルを分けることができないため,特に固定メッシュ上の非定常計算でファイル容量が必要最小限とはならない.
  • (Qファイルを用いない方の)PLOT3Dフォーマット(構造格子のみ)
    構造格子のデータフォーマットで最も有名なPLOT3Dフォーマットでは,ファイルフォーマットがバイナリフォーマットに対応しており,ファイルフォーマットも厳格に定義されており,その構造もシンプルである.また,メッシュファイルとデータファイルを分けることができるため、ファイル容量は必要最小限となる.ただし,有償の可視化ソフトウェアであるFIELDVIEWで用いられるデータファイル中の変数を定義するいわゆるname fileに対応しておらず,これに相当するものもないため,データファイル中の変数を定義することができない.具体的には読み込んだ順に変数名がFUNCTION01,FUNCTION02,...のように表示される.
  • EnSight Goldフォーマット
    EnSight Goldフォーマットでは,ファイルフォーマットがバイナリフォーマットに対応しており,その構造もシンプルである.また,メッシュファイルと各変数のデータファイルを分けることができるため,PLOT3Dと同様にファイル容量は最小限で済む.ただし,データファイルが変数ごとに分かれているため,特に可視化する変数が多い場合には出力されるファイルが多くなってしまう.

以上より,構造格子および非構造格子いずれの場合もEnSight Goldフォーマットが最も良いと判断する.

ParaViewによる可視化(1)

ひと昔前までは流体解析の結果を可視化するために,有償の可視化ソフトウェアを購入していた.最近ではもっぱら無償の可視化ソフトウェアであるParaViewを使わせていただいている.これはParaViewが有償の可視化ソフトウェアと比較して十分な機能を有し,遜色ないくらい軽快に動作するためである.有限体積法でいうところの構造格子に加えて,非構造格子上のデータも可視化することができる.そのため,「うまく使えば」研究や開発用途にも十分に耐えうると思われる.ここで,「うまく使えば」とは,

  • 可視化マシンのストレージをSSDにする.
  • 可視化マシンに高性能なグラフィックカードを搭載する.
  • 後述する可視化するデータファイルをバイナリフォーマットにする.

である.実際,著者はこれらをクリアすることで,数億点の解像度を有するデータの可視化まで成功している.なお,今となってはかなり古いが,グラフィックカードにはNVIDIA(R)のQuadro(R)のP5000を用いている.次回はデータファイルのファイルフォーマットについて詳しく書こうと思う.