流体解析のあれこれ

流体解析をこよなく愛する有限体積法の信者によるブログ

乱流流れにおける化学反応速度の推算

一般に,化学反応速度は温度の関数であるアレニウス型の反応速度定数と反応物の濃度の積で表される.燃焼のような化学反応を伴う流れの計算を行う場合,化学種の保存式の右辺にこの化学反応速度が現れる.エネルギーの保存式としてとくべき変数を内部エネルギーやエンタルピーではなく,温度とする場合にもエネルギーの保存式の右辺にもこの化学反応速度が現れる.層流流れは言うまでもなく,乱流流れに対してDirect Numerical Simulation (DNS)を実施する場合には化学反応速度をそのまま求めることができる.一方,Reynolds-Averaged Navier-Stokes (RANS)式に基づく計算やLarge Eddy Simulation (LES)を実施する場合,上記の保存式における化学反応速度を含む各項は時間平均あるいは空間平均される.しかしながら,この化学反応速度を含む項を時間平均あるいは空間平均する方法論が確立されていない.これは特にアレニウス型の反応速度定数が温度に対して非線形に変化するためである.そのため,RANSやLESの式にアレニウス型の反応速度を用いた例が散見されるが,厳密にはこれらはすべて間違いである.